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最高裁判所第一小法廷 昭和27年(れ)184号 判決 1954年2月04日

主文

原判決中被告人飯島政吉に関する部分を破棄する。

食糧管理法違反の点については同被告人を免訴する。

同被告人を懲役一年に処する。

同被告人の第一審における未決勾留日数中百日を右本刑に算入する。

同被告人に対し三年間右刑の執行を猶予する。

押収にかかる現金五百円(千葉地方裁判所八日市場支部昭和二一年領第四号の四の七)、現金二百円(同領号の四の一)及び袋入現金百円(同領号の四の六)は、同被告人から沒収する。

同被告人から金五百円を追徴する。

被告人平野亀治の本件上告を棄却する。

理由

被告人飯島政吉、同平野亀治の弁護人国枝鎌三の上告趣意第二点について。

所論は、被告人等は、経済関係罰則の整備に関する法律二条にいわゆる統制会社の役員又は職員でないから、無罪たるべきであると主張する。しかし、右法律二条にいわゆるその他の職員というためには、右統制会社たる本件日本藷類統制株式会社の社則等に職員とされていると否とによることなく、右会社において被告人等の従事する業務関係、雇傭関係等により定めるべきものであることは、当裁判所の判例とするところである(判例集二巻四号四〇五頁。)本件において被告人等は何れも各日本藷類統制会社から嘱託の辞令を受け、年二回報酬を受けていた者であって、右会社の作成する集荷計画、輸送計画、配給計画に基き、同会社千葉事務所の指令に従い、藷類の集荷、輸送、配給の事務に従事していたのであるから(被告人の飯島の予審第一回訊問調書八〇〇丁以下及び被告人平野の予審第二回訊問調書八五四丁以下)、単に上役から命ぜられて単純な機械的な労務に服していたものでないこと明らかであって、被告人らを右会社の職員と判示した原判決には所論のような違法はない。それ故に、この点に関する論旨は採ることができない。

同第一点について。

所論は、被告人飯島政吉に関する本件食糧管理法違反については大赦があったから免訴されたいというのである。よって調査すると、本件公訴事実中食糧管理法違反の点(原判決の引用する第一審判決判示第二の事実)については、昭和二七年政令第一一七号大赦令により大赦があったので刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条五号、旧刑訴四四八条、三六三条三号により原判決中被告人飯島に関する部分を破棄し、この点について同被告人を免訴すべきものとする。

よって原判決が確定した同被告人に関する大赦にかからない事実(原判決判示第一の事実)に法令を適用すると、同被告人の判示所為は、昭和二二年一二月法律第二四二号附則第二項、改正前の経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律第二条第一項前段第二項昭和一九年勅令第二六八号経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律ニ基ク経済団体指定ニ関スル件第二条第三三号、改正前の刑法五五条に当るから、所定刑期範囲内において同被告人を懲役一年に処し、且つ刑法二一条により第一審の未決勾留日数中百日を右本刑に算入し、情状刑の執行を猶予するのを相当と認め刑法二五条に従い三年間右刑の執行を猶予し、押収に係る主文第六項掲記の物件は、同被告人が本件経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律違反の各所為によって収受した賄賂の一部であるから、前記改正前の同法律四条前段によってこれを沒収しその余の賄賂はいずれもこれを沒収することができないから同条後段に則り主文第七項のとおりこれを追徴するものとし、被告人平野については、刑訴四一一条を適用すべきものと認められないので刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四〇八条により上告を棄却することとする。

よって裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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